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2011年9月

2011年9月25日 (日)

第469話 「ダイワ米国株ストラテジーα(通貨選択型):トリプルリターンズ」

最近、運用らしい運用の投信を取り上げたきたので、今回、久しぶりに飛び道具系を取り上げてみたいと思います。たまたま、大和証券のHPをみていたら、ちょうど先週金曜日(9月22日)が設定日である当該ファンドを見つけました。第一印象は、「毎月分配を出すために、また、やっちまったか」というネガティブな印象でした。簡単にこのファンドの概要です。

1、米国大型株に投資するファンド。銘柄選択は、ドイツ銀行の定量スクリーニングに基づき、それによって選定された40銘柄(これを定量スクリーニングモデルの名称から”クロッキー指数”とする)に投資する

2、毎月、このクロッキー指数に基づくコールオプション(1か月)を売却し、オプションプレミアムを得る

3、加えて、投信自体は、ブラジルレアルなど、いつも通貨選択型に仕上げる

これは、いわゆる”カバード・コール”戦略と言われるもので、有名なオプション戦略の一つです。現値よりも市場があまり上昇しないという前提で、現値よりもちょっと上の行使価格のコール・オプション(買う権利)を売ります。仮に、行使価格よりも上がってしまうと、オプションを行使されますが、裏では株式を保有していますから、チャラになります。一方、株価が現値近くで横ばいだったり、値下がりすれば、受け取ったオプション料(プレミアム)だけ、儲かるという仕組みです。

ポイントは、オプションの満期が1か月毎で、毎月、新たな行使価格で売りなおすということです。株式市場は、仮に上昇トレンドだとしても、上がったり、下がったりを繰り返し、連続して毎月上がらないだろうという想定に立てば、このカバード・コール戦略は中長期的に株式市場を上回る結果を出せるという考え方に基づいています。実際、米国のCBOE(オプション取引所)では、SP500のカバード・コール指数を発表していて(ティッカー:BMX)、8月末までの過去5年の実績では、年率1.5%程度カバード・コール指数がSP500を上回っています。ただ、月間勝率は約50%ですが。

従って、カバード・コール戦略自体は怪しい戦略ではありません。一方、ドイツ銀行のクロッキー・モデルでの銘柄戦略はどうなのでしょうか?実は、BNPパリバの投信で、日本株のクロッキー・カバード・コール戦略が2006年7月に設定されています。クロッキー指数自体のパフォーマンスはグラフでしか見れませんが、大体、2006年8月4日を100として、40台です。日経平均もほぼ同じぐらいですから、同じか若干良いぐらいでしょうか。基本的にバリュー的なスクリーニングのようですが、一方で、オプション料が高い、すなわち、変動性の高い銘柄を選定する傾向もあると聞いたこともあります。そもそも、2006年当時、配当が欲しい地銀などの金融機関に売られた商品ですが、その後、ある時期、パフォーマンスが悪化し、「クロッキーがグロッキーになった」と揶揄されたものでした。加えて、このオプション、上場オプションを売るわけではないでしょうから、店頭オプションの場合、実際、いくら抜かれているか分からないのです。

結局、総合すると、「中」という評価でしょうか。

しかし、相変わらず、通貨選択型を使っていますが、そろそろ曲がり角に来ているでしょう。ブラジルレアルなどは40円近辺まで値下がりしており、通貨選択型ファンドの基準価額は、軒並み暴落しています。市場の混乱は今後も続きそうなので、持っている人は、損切りでもいいので、出来るだけ早く保有残高を減らした方がいいと思います。

2011年9月18日 (日)

第468話 「インベスコ 店頭・成長株オープン」

前回、日本小型株の「JFザ・ジャパン」を取りあげましたが、アクティブ運用として当該ファンドがどうして良い成績だったのかという率直な質問をいただいております。前回も書きましたが、こういうアクティブ運用を分析する際には、ファンドマネジャーへのインタビューやより詳細な売買の分析、ポートフォリオの分析が必要です。このブログではそこまで対応できませんので、対象的な同種ファンドとの比較という手法を使用してみたいと思います。一般的に、日系運用機関よりも外資系の方が運用が上手いとの印象があると思いますので、外資系でかつ資産規模がJFザ・ジャパンに近いファンドである「インベスコ 店頭・成長株オープン」を取り上げます。1993年の年末から運用を開始し、現在65億円程度の資産規模がある投信です。8月末時点での運用実績を比較すると、過去1年でJFが+27%、インベスコが+8.4%、過去3年でJFが+14.3%、インベスコが▲16.6%、過去5年でJF+7.4%、インベスコ▲49.7%と、圧倒的な差が生じています。どちらも小型グロースです。なぜ、こんな差が発生してしまうのでしょうか?

2つのファンドの8月末運用報告書を見てみます。まず、市場別の投資状況ですが、ほぼ同じです。東証1部上場銘柄に53%前後、JASDAQ銘柄に26%前後です。従って、両ファンドを比較することは、特に問題が無いと考えます。

次に組み入れ銘柄数です。インベスコは52銘柄に投資しています。一方、JFでは直近の開示がありませんが、昨年12月には、75銘柄ぐらに投資していましたので、大きな変化はないだろうと想定します。従って、インベスコの方が銘柄を絞った運用のように思われます。しかし、保有上位10銘柄の占有率を見ると、JFは43%、インベスコが32%となっていて、集中投資をしているのは、実は、JFの方であることが分かります。「確信度の高い銘柄に多く投資する」という点がJF優位のポイントの一つかもしれません。

また、業種配分を見ます。JFの上位3つは電気機器(21%)、情報通信(10.8%)、空運業(10.5%)となっています。一方、インベスコの上位3つはサービス業(22.8%)、情報通信業(18%)、電気機器(12.5%)となっています。これを見ると、インベスコは、サービスと情報通信業種で、全体の40%を占めることになります。加えて、その中身の多くがインターネット関連事業のようです。従って、JFでは業種の偏りを抑えている点が、優位な点かと考えます。

業種にも関連しますが、上位10銘柄の顔ぶれを見ます。JFの1位は空運のスカイマークで8.2%保有しています。一方、インベスコの1位はサービス業の楽天で5.2%保有しています。ここで気になるのは、インベスコの楽天です、ジャスダック銘柄ですが時価総額は1兆円を超える大型銘柄です。この銘柄が5%占めるだけでも、指数との連動性が高まってしまいます。一方、スカイマークは、1000億円強の時価総額です。上位10銘柄の平均時価総額を比較すると、JFが約1000億円、インベスコが約2250億円となり、インベスコが倍です。しかし、インベスコから楽天を除くと、500億円とJFの半分になるのです。

これから判断すると、小型株で優位に立つには、①小型株というとインターネット関連という印象が強いが、投資テーマを広くとらえて、ボトムアップ銘柄選択に注力すること、②市場指数を代表してしまうような新興市場の大型株のウェイトは抑えること、③調査重視で、逆に確信度の高い銘柄には、投資ウェイトを高めるなどアクティブなウェイト変更を行うこと、などが必要ではないでしょうか。

なお、今回比較対象とした「インベスコ 店頭・成長株オープン」の評価は、「中の下」とさせていただきます。

2011年9月11日 (日)

第467話 「JFザ・ジャパン」

今回は、残高は目立ちませんが(88億円)、世間的に評価の高いファンドを取り上げます。これは、日本小型株ファンドの「JFザ・ジャパン」です。運用会社は、JPモルガンアセットですが、先頭にJFとあるように、旧ジャーディン・フレミングの運用商品です。元々、クオンツ運用(モデル運用)、バリュー系のJPモルガンが、ジャッジメンタル。グロース系のジャーディン・フレミングを買収してできた会社です。ジャーディンの会社名はなくなりましたが、商品ラインナップの中に、JFとして生き残っているわけです。

この投信、主に日本の小型株に投資しますが、大型株への投資が認められているので、ベンチマークは、TOPIXに設定しています。しかし、過去のリターンを野村ラッセルの大型バリュー、グロース、小型バリュー、グロースの指数リターンで回帰分析すると、90%近く、小型グロースで説明できます。従って、TOPIXと比較するのは妥当ではないでしょう。加えて、小型運用は、こうした指数と比較する投資家はあまりいません。これは個人も機関投資家も同じです。どちらかというと、絶対リターンを求める商品と位置付けています。

さて、この運用実績ですが、非常に良いです。2000年1月から2011年8月までの年率換算利回りは約+5%、直近過去5年でも年率+1.4%と、絶対値プラスを維持しています。過去5年の野村ラッセルの小型グロース指数が、▲13.7%であることを考えると圧倒的な成績です。先ほどの回帰分析に戻ると、指数で説明されない部分(切片)が、年率15~16%あります。すなわち、アクティブ運用で、年率15~16%を指数リターンに付加できる能力を有しているということになります。これはすごいです。特に、2003年、すなわち、2006年まで続く小型株相場で、大幅に勝ち越した貯金が大きいように思われます。小型グロース指数が2倍程度に上昇する一方で、当該ファンドは4倍になりました。古い運用報告書がHPで入手できないのが残念ですが、うまく乗ったとしか言いようがありません。

ただ、数字的には出ていても、これが将来的にも続くのかが問題です。こういう運用を評価するには、本来、ファンドマネジャーが誰で、実際どういう考えで運用しているかヒアリングする必要があるのですが、ここではできません。過去の運用報告書(2007年から)を見ると、期首と期末の業種配分は大幅に異なります。また、2007年末トップは情報通信、2008年は建設と、必ずしもどこかの業種に偏重があるわけではありません。相当、柔軟に、ダイナミックに銘柄を入れ替えているようです。こうした傾向が続くのであれば、運用方針に変化少なく、今後もリターン創出に寄与できるように思われます。

従って、世間評判通り、評価は、「上」とします。

2011年9月 4日 (日)

第466話 「さわかみファンド」

今回は、直販投信の神様のような存在である「さわかみ投信」を取り上げます。ただ、正直言って、完全個人向け商品で、かつ、澤上氏の経歴に過去の運用実績を推察できるものもありません。例えば、スイスのピクテという金融機関に在籍されたことがあるのですが、そこで何かファンドなどを運用していたのであれば、その辺から推察できるのですが、それも見当たりません。有名なわりに、分からないことが多い運用です。ただ、1999年に運用を開始して、直近2,125億円の運用資産を誇っています。直販だけで、この運用資産額は、文句なく凄い数字だと思います。

運用内容を見ると、ほとんど金融を保有していません。そして、電機、化学、機械、輸送用機器など、日本を代表をする優良企業中心に保有しています。ついては、このファンドを比較する場合、TOPIXよりも、日経平均株価が適していると考えます。そこで、実際に個人投資家が低コストで日経平均に投資できるETF(ここでは、野村アセットのETFを使用します。分配金込み)と比較してみます。さわかみファンドのリターンから日経平均ETFのリターンを引いた値(1年以上は、年率換算)は、過去1年▲3.4%、過去3年+0.6%、過去5年▲0.2%、過去10年+1.5%となっています。最近、どうも日経平均とほとんど変わらない結果となっています。

次に、さわかみファンドのリターンを当該ETFのリターンで、5年間で線形回帰して、その傾きを時系列でみていくと、2006年頃、0.78程度だったのが、その後上昇を続け、直近では、0.91ぐらいになっています。すなわち、傾きが1ということは、日経平均とほぼ同じ動きをすることを示しますが、さわかみファンドは、下げ相場に強さを示していたのが、最近は、指数との連動性を高めていることが分かります。

さわかみファンドは、割安株投資と投資スタイルを説明しています。しかし、この割安の意味は、ファンダメンタルズよりも、株価の動きを示していると考えられます。よく市場が大きく下げた日に、さわかみファンドは、買いを入れているというような説明をしているのを聞いたことがあります。すなわち、優良株を一時的に下げたところで拾い、価格が平均的な水準に戻ることで、リターンを高めてきたように思われます。しかし、資金が大きくなって、現金ポジションの比率も下がり、買い下がりの効果もファンド全体に対して限定的になっているのでしょう。

さわかみファンドのインデックス化を指摘する声は以前からありましたが、今回、数字的にも観察されたわけです。今後も、指数との連動性が高い状態が続くと思われるので、評価は、「中」とします。

全く別件ですが、投資顧問業協会の資料を見ると、さわかみ投信は、その取引の100%を、三田証券という証券会社に発注しています。私としては、あまり馴染みのない証券会社なので、少し違和感を感じてしまいます。

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