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2012年3月

2012年3月24日 (土)

第500話 「エマージング市場は、売り」

株式市場は、世界的な金融緩和で、活況です。日本株も1万円を超えました。株は上がることは良いことで、資産効果が期待できます。しかし、以前にも書きましたが、これは過度な金融緩和が引き起こしている無理やり相場です。中長期で見ると、先進国の多くは、高齢化の進展で、デフレ・トレンドに入ってしまっています。そのトップが日本なわけですから。中長期デフレ・トレンドでは需要が盛り上がりませんから、足りない分をエマージング国の需要に頼る必要があります。これが、2000年台からの大きなトレンドです。しかし、いくらエマージング国でも、経済成長が永遠に続くわけではありません。あの中国でも昨年辺りから減速が顕著です。南米も同じで、金融緩和が進んでいます。株価も、あまりに将来の成長まで織り込んでしまいました。当面、先進国株式より、パフォーマンスが悪い状況が続くと考えます。先進国株とエマージング株の比率を見ると、90年代半ばにエマージング株の相対優位性がピークを打って、その後、調整したのち、昨年頭に、90年代と同等水準まで相対優位性がピークアウトしています。今後、長い調整局面に入るでしょう。株価とエマージング通貨の相関は高いですから、通貨も心配です。

結論、過去2~3年間、エマージングブームで、多くのエマージング株、通貨を組み入れた投信が出ましたが、その保有している分については、この春には処分した方が良いと考えます。仮に株式を持ち続けるなら、先進国の株式の方が魅力的であり、是非、乗り換えるべきと考えます。資産が減らないうちに。

2012年3月22日 (木)

第499話 「インサイダー問題とAIJ問題」

皆様ご存じのように、野村HDが2010年の国際石油開発帝石の公募増資に絡んだインサイダー取引に関与していたことが明らかになりました。増資の引き受け証券として知り得た情報を、インサイダー取引を中央三井アセット信託の運用者に教えて、その運用者が顧客の口座で空売りし、下がったところで買戻して利益を得たそうです。自分の懐を温めるためのインサイダー取引ではなく、顧客の口座であったことから、初めての事例として話題になっています。

しかし、本件、やっと摘発されたかという印象です。こうした増資がらみで公表前からヘッジファンドが空売して値を下げ、そして買い戻すといったことが何例も見られたのです。従って、業界の人は誰しも情報が流されていると感じていました。その問題が今回初めて指摘されたわけで、いうなれば、当局から、「今まで、目をつぶってきたけど、もう止めておけよ!」と大手証券会社等に見せしめの通達がされたと業界では受け止めています。黙認してきた当局にも大きな責任があります。これってAIJ問題と同じです。AIJは怪しいことをしていると何度もタレこみがあったのに、何もしなかったわけですから。

最後に、もう一つ共通点がありました。それは、また、野村証券がかかわっていることです。その前はOB、そして、今回は現役の女性の営業担当だそうです。しかし、公募増資の引き受けの担当ではないので、社内で情報遮断が全く機能していない、ズルズルであったことがバレテしまいました。野村は、今後、こうした引き受け幹事から落とされる可能性があります。ちょっと株価も上がってきたにもかかわらず、泣きっ面に蜂です。ただ、個人の懐を温めるインサイダーではないので、単に一人の営業担当が勝手にやったこと、と始末できないでしょうね。きっと、組織としての関与がどうであったかの解明が進むものと思われます。やっぱり、野村証券のDNAは、…。

2012年3月11日 (日)

第498話 「運用会社の財務状況」

AIJ問題は、報道だけが先行して、実態解明が遅れているようです。しかし、運用会社が存在することがはっきりした今、我々もそうした運用機関に騙されないようにしないといけません。ただし、そうした運用機関を見つけることは、それほど容易ではありません。AIJは特に怪しすぎる要素が多かった特殊な会社ですが、他にも、怪しい会社、ないしは、きちんとした会社なのだければ、経営状態に不安があり、運用結果に影響が出そうな会社がありえますので、何とか識別し、避けたいものです。

それに役立つ一つの情報としては、運用会社の財務情報です。運用会社は、投資する会社の財務状況を分析する会社なのですが、意外と、自分の会社の財務状況は、芳しくないことが多くあります。この情報は、投資顧問会社であれば、日本投資顧問業協会のHPに公開されています。

ここで、面白い仮説があります。当該HPからAIJの財務情報を見ると、H22年12月期決算の投資顧問料収入が79百万円となっています。このときの受託資産額が約2100億円ですが、仮に約2000億円の平均資産があって、ヘッジファンドですから2%の報酬率を取っていたと仮定すると、40億円の収入があるはずです。これが約80百万円の収入となると、受託資産が40億円でないと計算が合いません。??この40億円という数字、確か、今、報道で言われている実際に残っていると言われる資産額と一致します。H21年12月期決算も1億円弱の収入ですから、もうすでに資産が減っていたと想像ができます。

上記は、あくまでも仮定の話ですが、資産額と収入のアンバランスは、調べればすぐに分かります。他にも、協会のHPを見ると、赤字の運用会社が多く見られます。これは、国内独立系だけではなく、外資系大手運用機関の国内法人であるケースも見られます。外資系の国内法人が赤字でも、倒産する可能性は低い(無い?)でしょうが、事業縮小のリスクはあります。したがって、安心して預けていたら、運用会社撤退なんでこともありえるのです。これらの会社は、投信の運用を行っているので、個人投資家の方も、対岸の火事ではありません。運用会社の財務状況もきちんとチェックしましょう。

2012年3月 3日 (土)

第497話 「魔女狩り」

3月3日の新聞各紙に、AIJ問題で社保庁OBのコンサルタントが、同じく社保庁OBの先輩、後輩にAIJを紹介した疑いがあるとの記事が掲載されています。これは、前回、指摘した問題そのものです。この問題のコンサルタントは、I氏であろうと業界関係者内では容易に想像ができます。この方、ある総合型厚生年金基金の常務理事時代から、悪い意味で有名でした。ヘッジファンドのプロを自称していますが、成績が悪いと6か月で解約なんてこともあったと聞いています。その基金は、ヘッジファンドに過度に偏った投資を行っていましたが、この方が退任された後の後任の方が、全て見直して(厚生労働省の指導があったとの噂もありますが)、ヘッジファンド投資を整理したと聞いています。確かに、今回の被害を受けた基金に、その基金の名前はありませんでした。こういう危ない人物が暗躍することで、モラルを忘れた行き過ぎた行為が助長されたわけです。

さて、最近、年金基金の間では、第二のAIJがあるのではないか、先回りして疑わしい運用機関を解約する動きが出ているようです。特に、①情報開示が不十分な運用機関、②会社の経営陣がAIJと同じ金融機関出身者で構成されている運用機関、などがポイントのようです。それにほぼ該当する○○社では、数件解約が先週あったと聞きました。まさに、業界は、「魔女狩り」の状態です。これでは、日本の資産運用業は、縮小していく可能性があり、それは投資家にとっても不幸なことだと思います。心配です。

2012年3月 1日 (木)

第496話 「総合型年金って何?」

AIJ投資顧問の報道によって、よく分かったことがあります。つまり、世の中で年金というものを理解している人が、非常に少ないということです。多くの報道で、あたかも中小企業がAIJに直接預けた年金がなくなったかの報道、などなど、ハチャメチャな報道がたくさんあります。それも、どこかの大学の先生が解説したりするから、悲しいです。

まず、今回、AIJ投資顧問で被害を被った顧客の多くは、「総合型の厚生年金基金」でした。厚生年金基金とは、企業年金の一種で、いわゆる三階建ての三階部分にあたります。一階は国民年金、二階は厚生年金で、ここまでは公的年金と言われる部分です。厚生年金は会社と従業員が折半で保険料を支払います。三階部分の厚生年金基金は、イメージでは2階半みたいな制度です。すなわち、公的年金である厚生年金の一部を国に代わって企業年金が運用し、支払いを行います。これは、純粋な企業年金部分が小さくても、公的部分の一部を合わせると規模の経済を享受できるという厚生省様の温かい心遣いだったのです。この一部分を「代行部分」と言います。確かに、この制度ができたときの国債金利が7%ぐらいで、予定利率と呼ばれる年金で必要とする利回りが5.5%でしたから、この差の儲けで、「○○年金会館」などを建てたところも多くあります。

こうした特権のある厚生年金基金ですから、誰にでも特権をあげるわけにはいきません。ある程度の規模がないと設立を認めませんと厚生省様は決めたわけです。したがって、大企業、もしくはグループ会社を含めると大企業になるところだけが特権を得ました。しかし、中小企業にもチャンスをあげようと、同業種、同地域、例えば、トラック輸送業とか建設業で中小企業が集まって、一定の規模になったら、特権をあげますよ、という制度ができたわけです。これが、「総合型の厚生年金基金」です。しかし、これには、厚生省様の天才的な仕組みが組み込まれていて、総合型は、烏合の衆の集まりで、特定の会社から専任の人を配置できません。そこで、お役人(社会保険庁の人)の天下り先にしました。加えて、天下り先を増やすために、先程の「一定規模」の基準を下げて、総合型厚生年金基金の数を増やしたのです。その結果、AIJに騙されるような、厚生年金基金の担当者が一杯いるわけです。

天下りが一概に悪いとは言いませんが、正直、こうした人が主に騙された理由の一つに、役人固有の問題があります。役人同士では、先輩後輩関係などネットワークが重視されます。その結果、AIJのように積極的な営業攻勢と、表面上の高い利回り、そして、それを他の総合型年金に紹介するという、魔の連鎖が広がったわけです。

最近、年金基金の中では、今回のAIJの問題は、監督官庁がしっかりチェックできなかったからだと、責任転嫁を開始しています。一部では、損失を公的資金で穴埋めできないかと言っている人もいます。やれやれ、呆れて、何も言えません。

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