経済・政治・国際

2009年12月27日 (日)

第390話 「ダウの犬」

12月25日付け日経ヴェリタスHPのスクランブルに「ダウの犬はよみがえるか」という記事が掲載されています。「ダウの犬」理論とは、ダウ工業株30種平均のうち、配当利回りの高い順に10銘柄を選んで年初に投資すると、年末まで1年間の平均値上がり率は残り20銘柄の平均を上回るというものです。この場合、Dog(犬)の意味は、値打ちのないもの、売れ残り商品の意味です。この投資手法は、08年、09年と失敗しています。金融銘柄やGM、GEなどの優良株が軒並み下落したためです。しかし、2010年の場合、金融銘柄がなくなり、ATT、ベライゾン、デュポン、クラフトフーズ、メルク、マクドナルド、シェブロン、ファイザー、ホームデポ、インテルがダウの犬銘柄に選ばれそうだということです。確かに、米国では配当利回りが投資指標として有効だと信じている人が多いことは事実です。プロの運用会社でも、配当割引モデルを使っているケースは、米国株運用に多いような印象があります。ある運用機関の資料でも、米国株から得られる投資収益率の半分は配当利回りで説明がつくというものを見たことがあります。そういう点からは、クラッシュから平常状態に近いところまで戻り、今後は、配当に注目が移るかもしれません。また、個別銘柄でも、通信、半導体、薬品・バイオなど、ITバブル崩壊時に売り込まれ、まだ、完全に戻っていない銘柄が含まれており、私の期待業種とも合致しており、来年は良いかもしれません。一方、日本はどうでしょうか?残念ながら配当利回りは、日本であまり重要な投資指標になっていないと考えられます。一方、企業業績を見ると、10-12月以降は、増益企業増えるでしょう。現状の株価は、高くもなく、安くもない適正という印象がありますが、今後は、来年度の業績回復を織り込んでいくので、意外と堅調に推移すると考えます。デフレは心配ですが、二桁ぐらいの株価上昇は2010年で期待できると思っています。素直に企業業績の回復度合いにリンクすると考えているので、その裏づけとなる数値が発表されれば、さらに確信は高まるとは思いますが。

2009年12月21日 (月)

第389話 「日本株からグローバル株へ」

12月21日付けのブルームバーグ・ニュースによると、国内2位の自動車メーカー、ホンダは企業年金基金の運用で、これまで一定の割合を日本株に振り分けていた枠をなくしました。4月に退職給付制度を変更したのに伴い運用方針も見直し、今後は日本株と外国株を一本化して運用するため、日本株の比率は年ごとに変動することになるとのことです。このニュースをもう少し説明すると、年金運用では、資産配分というのを決めて運用を行います。すなわち、株に何%、債券に何%といったぐあいです。一般的には、こうした資産配分を決める際の資産区分の分け方を、日本株、外国株、日本債券、外国債券、現金などとしてきました。加えて、これも通説として、年金の支払いは円建てだから、資産配分においても円資産を中心にすべきという考え方です。これによって、日本の年金の大半は、外国株よりも日本株に多く配分しています。これを「ホームカレンシーバイアス」とか「ホームカントリーバイアス」と言います。しかし、日本株が低迷していることや、そもそも、世界の株式時価総額において、日本は10%程度にもかかわらず、どうして、外国株よりも多く持つ必要があるのかという疑問が出ています。その結果として、ホンダのように、日本株という資産区分を廃止し、世界株(グローバル株)という新たな資産区分に変更し、日本株比率を10%程度に自然と抑制している年金が増えてきています。日本企業から日本株が見放されたという、非常に嘆かわしい状況になってしまったわけです。日本企業も、自国の年金ぐらいには、魅力的と思われる努力が必要です。ちなみに、米国で同じような質問をすると、まず、自国の株式に重点的に配分する従来の姿勢から変わっていないそうです。一つの理由として、自国の株式を売って、外国の株を買うと、加入者である従業員、すなわち、労働組合から文句が出るそうです。さすが、米国。

2009年12月20日 (日)

第388話 「東証アローヘッド」

12月20日付けの日経ヴェリタス70面の下の方に、「個人投資家 七転び八起き」という連載コーナーがあります。個人投資家の投資実績を紹介するというもので、素人的な人から、プロに近い人まで、毎週、紹介されています。正直言って、毎週紹介される人が、実在の人かどうかは分かりません。しかし、今回は、そうした内情を詮索することはせず、この内容を信じてコメントします。今週紹介されているのは、元証券会社社員で、先物・オプションのトレーディング経験のある方。5000万円を元手に、現物と信用取引の売りを組み合わせた「株式ロング・ショート戦略」を行っているとのこと。過去1年の成績は、60%ということで、非常に順調のようです。しかし、この人クラスになれば、世間のヘッジファンド運用者とあまり変わらない、プロと言っても良いかもしれません。最近は、こうした個人投資家といいながら、プロまがいの人が多くなります。一方、プロの方から言わせると、こうしたセミプロの個人の方が儲けるチャンスが多いと感じているようです。すなわち、プロは非常に大きな資金の運用を行います。これを市場に知られることなく、発注することは困難で、大きな資金による買いや売りの注文の存在を知られると、こうした個人投資家に先行して取引をされ、利益のチャンスを与えてしまうことになります。特に、日本株は、買いと売りの板が合って、取引が成立するまでの時間が欧米市場に比べて長いことから、こうした収益チャンスを与えてしまうことになります。しかし、来年1月4日から東証による新システム、「アローヘッド」が稼動を開始します。アローヘッドにより、注文、約定処理の高速化が可能になります。また、板情報も、リアルタイムで配信されます。これにより、個人特有の収益チャンスは以前よりも少なくなると思われます。また、リアルタイムの板情報ですが、これは、あくまでも東証の出しての論理です。これに、通信手段による時間ロス発生の可能性があります。大手証券会社は、東証に自社のサーバーを置いて、通信距離を短くし、文字通りリアルタイムを実現しようとしているようです。まさしく、2010年は、日本株における高速化元年となり、トレーディングの世界が大きく変わるかもしれません。

2009年12月13日 (日)

第387話 「高分配投信の行く末」

12月13日付け日経ヴェリタス1面の右端に、グロソブがギリシャ国債を一部損切りし、基準価格にも悪影響があったと掲載しています。ギリシャ国債は、先週、格下げの話が出て、値下がりしました。しかし、同記事内に、グロソブの基準価格のチャートが出ていますが、6200円前後での推移です。過去の分配金込みでの計算上の基準価格は10000円を超えているとはいえ、やはり毎月分配がタコ足配当であることを証明しています。月次報告書を見ても、ポートフォリオの平均直利が4.47%です。今年に入って30円~35円、毎月払っていますから、6%程度の分配です。その間、円高ですから、為替で儲けているわけでもありません。従って、タコ足なわけです。残高も大きく落ちてきており、今、流行のブラジルレアルの通貨選択型投信に流れているのでしょう。投資家が選択しているのか、証券会社が促しているかわかりませんが、先進国通貨、債券のみのグロソブでは分配能力に限界があると見切ったのかもしれません。しかし、一方で、通貨選択型にも疑問があります。日本株やREITにブラジルレアルの通貨先物予約を買い建てるだけの単純な商品ですが、英語では、「ダブルデッカー」というそうです。ロンドンの2階建てバスの名前を用いて、リスクを2階建てにしているという意味です。これも、高分配を出すための苦肉の策で、また、証券会社では、「ブラジル」というだけで、投信が売れるという非常に有難いもののようです。高金利通貨に投資して、金利差を享受する。もしも、そんな単純なことで、ずっと儲かり続けるなら、専門家は要りません。「赤信号、みんなで渡れば怖くない」の考えで、こうしたレアルを用いた分配型商品ばかりになっていく投信業界。自ら、個人投資家マーケットに時限爆弾を仕掛けているようにしか思えないのですが。

2009年12月 4日 (金)

第386話(続編)

12月4日付け日経新聞朝刊に昨日書いた第386話に関連する記事「証券会社に「増資特需」 今年の手数料収入、前年比6.6倍」が掲載されてました。結果的に、非常にタイムリーな話題となりました。http://fundbuster.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/386-27d1.html

2009年12月 3日 (木)

第386話 「野村證券の辿る道」

今日は、私の友人のIRコンサルタントから聞いた話です。同氏によると、IR業界での最近のホットニュースは、森精機による181億円の増資だそうです。増資自体、目新しい話ではありませんが、この森精機は、無借金経営の非常に財務体質強固な会社だということです。なぜ、そうした会社が今、増資するのか?どうも、主幹事の野村證券が主幹事欲しさに無理に増資させたとの観測が業界に広がっているとのことです。当然、増資によって、希薄化が起きますので、確かに、同社の株価も先週、発表直後はストップ安をしました。このニュースが海外投資家の間で非常に関心を持たれており、そのIRコンサルタントの話では、ある会社が海外の投資家廻りをした際に、「日本の証券会社は、既存株主の価値をどのように考えているのか?」という質問ばかりで、全く自社のIRをする時間がなかったとのことでした。これは由々しき問題です。ただでさえ、日本株だけが一人負けの状況で、その原因が、儲け主義に走った証券会社の暴走とそれに従う企業経営者であったとなれば、日本株の将来は真っ暗です。加えて、これだけの増資ラッシュ、誰が引き受けているのか疑問ですが、そのIRコンサルタントによると、ヘッジファンドが主要な引き受けてになっているとのことです。増資発表後に空売りをして、増資分で買い戻しているとのことでした。彼が言ったことが全て正しいかどうか、現時点で判断できませんが、火のないところに煙はたたないと言います。例えば、最近の野村證券の状況を見れば、そうかもしれないと思いたくなります。自分で自分の首を絞める、どうしてこんなことになってしまったのか。資本市場改革が急務であると考えます。

2009年11月29日 (日)

第385話 「ETF以外の投信を買ってはいけない」

11月29日付け日経ヴェリタス52、53面に「忙しい人こそ長期・分散投資」という特集が掲載されています。内容は、あまり大したことは書いていません。リスク・リターンの観点から、分散投資を行い、尚且つ、コストの低いインデックス型の投信を使いましょうというものです。基本的にこの考え方に異論がありませんが、低コストのインデックス型投信のうち、ETF以外のいわゆる公募の投信を買うことがお勧めできません。正直言って、まだまだ高いと言わざるをえません。例えば、比較的安いと評判の住信アセットが運用する「STAM TOPIX インデックスオープン」でも、0.46%かかります。これは機関投資家世界では4~5倍ぐらい高い費用です。まだまだ、個人は損をしているとうわけです。加えて、最近のデフレです。モノの値段は、大きく下がっているのに、なぜ、金融商品だけは高いままなのでしょうか。インデックス型はまだ良心的ですが、多くの投信は、1.5%前後の報酬が必要でう。▲2%の物価上昇率の時代に、異常に高いと言わざるをえません。こんなものを証券会社や銀行にだまされて購入している個人にも責任があります。もちろん、情報の非対称性という問題もあり、個人が分からず購入しているかもしれませんが、それはそれで、金融商品取引法上、問題です。アクティブ投信の適正水準は、一律には言いがたいですが、概ね、0.6%~1.0%だと考えます。これは、機関投資家への適用報酬と投信のコストを考慮したものです。言い換えれば、運用報酬で、1%以下でなければ、デフレ時代の期待収益率に見合わないと考えます。運用会社は、高い丸の内、大手町などを離れ、安い賃料のオフィスに移り、人件費も抑制し、良質で安い運用商品を提供する努力を行うべきです。銘柄選定では、経営者にそういう点を求めているわけですから、まず、自ら手本を示すべきです。

2009年11月23日 (月)

第384話 「JAL年金削減について」

11月23日付け各メディアによると、JALは、OB向けに説明会を開催し、年金削減に至る経緯に関する初の説明会を開催しました。説明会では、削減幅について具体的には語られなかったようですが、新聞等によると、OB3割、現役5割の削減を計画しているようです。これは、運用利回りを現在の4.5%から1.5%に3%引き下げられるためです。年金の計算については、第378話にも書いています。http://fundbuster.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/378jal-3254.html

元々、退職時にもらう退職金に金利をつけて分割払いするので、金利が下がると年金の減額となるわけです。しかし、インタビューを受けるOBには誤解をしている人も多く、「退職金でもらえばよかった。年金にして減額されるとは」と文句を言っている人がいましたが、それは大きな誤解です。退職時に確定している金額が減っていません。付与される金利分が減っただけです。そもそも、市場金利がゼロ%に近いところで、4.5%という高金利を享受してきたのですから、文句を控えめにした方が良いでしょう。しかし、年金減額について、JAL経営陣は、方法を間違ったと言えます。こうした緊急事態ですから、仕方ない決定なのですが、OBに対しては、全国で、何度も説明会を行うなどを、これまでも行ってこなければいけなかったのです。それを先送りや避けてきたために、現在のこうした複雑骨折になってしまったわけです。現在、双方には、大きな溝と不十分な理解という状況にあります。今からでも間に合うので、経営者は、全国行脚を行い、説明を尽くすことが重要です。

2009年11月22日 (日)

第383話 「日本株低迷:経営者の質とIRの向上」

11月22日付け日経新聞1面「企業 強さの条件」という特集記事に、最近の日本株低迷と機関投資家による日本投資比率引き下げについて掲載されています。年初からの日経平均株価の上昇率は7%。一方、中国やブラジルは8割前後、米独仏などの先進国でも2割近くの上昇率で、日本の低迷が際立っています。カーライルグループの日本代表は、「日本企業は意思決定が遅く、海外投資家は関心を失いかけている」と厳しいコメントを載せています。そうしたマネーの日本離れを食い止めるため、IRのあり方を検討するディスコ会長の話なども紹介されています。私も、仕事がら顧客に資産配分についてアドバイスを提供することがありますが、最近では、日本株と外国株という今までの概念から、グローバル株という概念に変更するように勧めています。今までは、株式投資の内訳として、日本株60%、外国40%が一般的でしたが、これをグローバル株の観点に変えると日本株は全体の10%程度に大きく減少します。この考え方は、じわじわと広がってきていて、一つの日本株売り要因になっているかもしれません。しかし、こうした日本株離れの要因として、私は2つ挙げたいと思います。一つは経営者の質、もう一つはIRです。経営者の質としては、最近、某地方で、日経225にも採用されているスーパーの会長と財務担当役員にお会いする機会がありました。その会社のPBRは0.5倍です。私は、その点について話したところ、財務役員は、怒りはしないものの、明らかに不愉快な雰囲気で「株価はPBRだけで決まるわけではないでしょう」と発言されました。会長は、機関投資家による安定株主作りこそ株価回復の切り札のような発言です。まったく呆れました。日経225に採用される日本を代表する企業が、自分達の会社の企業価値向上に真正面から向き合っていないという事実です。PBR0.5倍とは、買収される可能性もあるわけで、真剣に、何をすれば企業価値を高められるか、早急に検討すべきであるのに。こうした経営者の質の低迷が、日本株低迷と直結していることを理解すべきです。そして、企業価値向上の方策を立てたら、それを投資家に分かってもらう対応をすべきです。それがIRです。しかし、今のIRは、広告のような発想で、資料の見てくれを良くしようとか、証券会社に頼んで、適当にアポの入る内外機関投資家に会いにいくだけです。私の友人が、ちょっと違ったIRコンサルティング会社を経営しています。例えば、何か新しいお菓子を売る場合、どの年齢層に売れるのかなどの消費者の動向調査を行うことは普通に行われています。しかし、IRでは投資家の行動や嗜好を調査することをしている会社はほとんどありません。例えば、企業の成長力に注目する投資家に、収益の安定性や割安性が自慢の会社がIRに行っても、投資してくれる可能性はかなり低いと言えます。また、仮に、その会社について、投資家がROEに注目していたとしいたら、IR的には、ROEの改善や将来見通しを伝えることが重要ですが、全くことなる経営指標を強調しても的外れになります。こうした面を補強するため、私の友人の会社は、世界の機関投資家の投資行動を調査し、また、対象となる日本の企業の株価特性を分析し、株価に直結するIRコンサルティングを提供しています。こうした努力もしないと、日本から投資マネーが逃げていくことを止めることはできないでしょう。頑張れ、ニッポン。

2009年11月15日 (日)

第382話 「インサイダー事件」

またまた、本業で忙しい1週間を過ごしました。ブログのアップも滞りぎみで、心苦しいです。とは、いいながら、市場は、横ばいを続けており、ニュースを見渡しても、あまり興味深いものが見つからないのも正直な感想です。1年前の大混乱で谷底に落とされ、山道を一所懸命に登って、今、ちょっと、平地にたどり着いた感じでしょうか。この1週間で、幾つか気になった情報では、米国公的年金のカルパースが、1年前に投資したクレジット投資を利喰ったとの話がありました。クレジットもそろそろ正常状態に近いということです。一方で、モノラインが経営に対して改めて懸念が出ています。最後に、ここ2週間ぐらい注目されているのが、インサイダー事件です。11月15日付けの日経ヴェリタス48面において、「米インサイダー事件拡大、ヘッジファンド業界打撃」という記事が掲載されています。ガリオン・グループに続き、インクレメンタル・キャピタルというトレーディングキャピタルによるインサイダー事件で、逮捕者がでたことです。しかし、米国操作の凄いところは、盗聴という手法が用いられていることです。これで、インサイダー情報を入手したところを押さえてしますわけです。ヘッジファンドは、マドフ事件のような詐欺に続き、またしても信用を失墜してしまう自爆行為を行ってしまいました。これは、2000年代に入って、機関投資家の大きな資金が入り、収益チャンスが欠乏したことが、大きなリスクや不正に走らせる一つの要因になったのかもしれません。「適応的市場仮説」というものがあります。ダーウィンの進化論のように市場を説明するものですが、まさしく、ヘッジファンド業界はこの仮説に当てはまるものです。一方、日本でも、PEファンドのユニゾン・キャピタルのパートナーによるインサイダー事件が話題となりました。当該パートナーはすでに死亡しており、当局による捜査は行われていないようですが、ユニゾン独自の第三者委員会調査が年内ないしは年明けまでに終わるそうです。同社は、取引禁止銘柄は指定していたものの、従業員の株式取引は禁止していなかったとのことです。おそらく、このパートナー、金銭的には比較的恵まれていたのではないかと想像しますが、なぜ、こうしたことをしたのか理解に苦しみます。個人的なことですが、私は、投信またはETF以外の取引を自粛しております。運用の世界に関わるものは、それなりの自己規律が求められるのだと思います。非常に、悲しいかぎりです。

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